活動報告

大学コンソーシアムひょうご神戸設立5周年記念式典・
シンポジウム「震災と復興〜いま!ひょうご神戸からの発信〜」
を開催しました

式辞全文

大学コンソーシアムひょうご神戸理事長
関西国際大学 学長 濱名 篤

本日はコンソーシアムひょうご神戸の設立5周年記念式典にご出席を賜り誠にありがとうございます。文部科学省の磯田高等教育局長様、全国大学コンソーシアム協議会の代表幹事であられる八田同志社大学長をはじめ多くのご来賓をお迎えし、公務のためこの後のシンポジウムからになりますが井戸兵庫県知事にもご臨席を賜り、このような式典と記念シンポジウムを開催できますことを、コンソーシアムを代表いたしまして御礼申し上げます。

本日配布させていただきましたように、本コンソーシアムの発足のきっかけは、2005年11月11日に開催された兵庫県下学長会議の議題として「県下大学コンソーシアムの強化について」という議題が提出されたことです。提出したのは学長1年目で県下最年少であった私です。後で知ったことですが、この会議には学長なら誰でも議題を提出できるのですが、照合事項はあっても審議事項は年に1件程度しか出ていなかったそうです。前例を知らなかった新米学長が怖いもの知らずに、高卒者の流出県になっている兵庫県を、大学間の連携を強化し、地域や行政にも協力を呼びかけて主体的に活性化させ、県下の大学全体の向上をめざそうと呼びかけた訳です。

このような無謀な提案に、当時の野上神戸大学長、平松関西学院大学長、そして本日出席して頂いております杉村甲南大学長、山根神戸親和女子大学長に賛同して頂き、趣意書や事業計画づくりについて検討することになりました。兵庫県では、阪神淡路大震災を機に井戸知事のご発案で、ひょうご大学連携事業推進機構という組織がつくられおり、ひょうご講座といった県民を対象とする講座の開講などがすでに行われていました。しかし、県に大きく依存した活動で、大学自身が主体的、能動的に行っているわけではない状況でした。すでに18歳人口が減少に転じており、ともすれば受験生獲得のライバル同士であり、他の大学と連携・協力することは忘れられがちであります。しかし、国際都市である神戸を中心に、観光、ファッション、洋菓子などで全国から魅力的な地域として知られているひょうご神戸も、高卒者は他の都道府県への流出が1万7千人余りいるのに比べ、流入は1万6千人弱となっており、流出県になってしまっていることを話題に出しました。高校生の進学先としても魅力ある大学が揃うひょうご神戸にしようではないか、という熱い議論になったことを覚えています。しかし、この会議出られていた学長もこの5年で完全に後任者にバトンタッチがなされ、責任者が長く務められないほど変化の多いのが現代の高等教育といわざるを得なくなっています。

さて話しを戻しましょう。県下学長会議から7ヶ月後の2006年6月12日に、5人の学長連名で起草した趣意書の下に、設立総会が開催され本コンソーシアムは発足しました。ひょうご・神戸の国際性を活かしたコンソーシアムにしようと、中心事業に国際交流事業を据えたのが本コンソーシアムの特徴でした。この事業は2008年に文部科学省の戦略的大学連携支援プログラムに採択していただき、その成果は近年とみに社会的に必要性が高まっているグローバル人材育成に有効なプログラムとして高い評価を受けることができました。これもコンソーシアムの設立と発展にご協力を頂いてきた関係各位のご協力の賜物であると感謝しています。

現在中央教育審議会の。学士課程答申では、地域コンソーシアムや、FDのための地域共同拠点の活動の充実が明記されていました。また今期の大学分科会ではこれからの学士課程教育のあり方につきまして、様々な議論を交わしています。私も委員の末席を汚し、議論の輪に加えて頂いておりますが、審議の中では何度も「大学間連携」という言葉が出てきます。

 

一例を挙げてみましょう。大学が重視する機能を強化し,組織的な教育を効果的に進める支援のひとつとして、今日的な状況の変化,例えば,我が国の震災後の復興を担う多様な人材育成の必要性,加速化するグローバル化,産業・就業構造の変化の中の人材育成の必要性が具体的課題に掲げられ、地域の発展を支える人材育成などに関し,大学間連携による取組が一層進むようにすることも求められる、という見解が示されています。

個別の大学だけでは解決しにくい課題を、大学間の連携によって解決し達成していくという方向性は、高等教育のユニバーサル化の進行による学生の多様化と、グローバル化の進行による学位の質保証が国際的に求められる状況の下では、ある意味で当然の流れかもしれません。

欧米先進国や中国の大学と比べ、個別大学の規模が小さい我が国の大学にとっては、近隣の大学を敵視するのか、地域社会の大学の切磋琢磨と協同によって、ご臨席頂いている八田理事長の下で大きく発展を遂げられている京都のように、大学自体が地域社会になくてはならないある意味での“産業”となっていくのか否かは、われわれコンソーシアムの会員大学のこれからの意識の持ち方に委ねられているといえます。

私はコンソーシアムの今後の在り方において重要なことは、第1に自己責任と相互扶助、第2に多様性と絆の2組の言葉であると考えております。

高等教育の先進国であるアメリカでは、都市の価値を決める要素にメジャーリーグの球団のフランチャイズがあることと並んで、大学が地元にあることが尺度の一つとされています。アメリカにおける地域社会と大学の関係は、州立大学や土地付与大学すなわちランド・グランデッド大学といった大学の成り立ちの影響も多いのですが、市民教育を重視する立場から1990年に「国家およびコミュニティ・サービス法」が制定され、カリキュラムとしてサービスラーニングが学校教育に取り入れられるようになり、地域社会のコミュニティと学生・生徒や大学・学校の関係はより緊密なものになり、市民教育が成果を上げるようになってきたといわれます。

世界的に急激な社会変動が続き、今回の東日本大震災のような大災害やエネルギー確保をめぐる環境問題など、解決困難な社会問題が世界各地でグローバルなレベルで進行する中で、世界各国ではほぼ例外なく市民教育の改革が進められ、社会参加が進められています。

こうした状況の下では、一人一人の人間が自己責任と相互扶助を強く意識して協働していくことが不可欠です。自分のことは自分で守る、他人には迷惑をかけない、といった自立心に裏づけられた自己責任をもつことは重要なことです。しかし、人という文字がそうであるように、人は1人では生きていけない。2人の人間が支え合って立っているのです。ところが、支え合いがいつの間にかもたれ合いになっていたり、ぶら下がっているだけの人がでてくると相互扶助をすることが馬鹿馬鹿しく思えたりしてきます。自己努力と相互扶助をどのようにバラスを取っていくのか。これは学生たちの市民教育における課題であると同時に、我々大学同士にも当てはまることではないでしょうか。

東日本大震災が発生したときに、我々ひょうご神戸の大学人にとっては阪神淡路大震災を思い出さざるを得ませんでした。学生、保護者,教職員、校舎や施設設備に大きな被害を受けた会員校は少なくありません。回り持ちの理事会で、東日本の大学から、転学者の受け入れではなく、1学期あるいは1年間の疎開留学を受け入れようと準備をし、文部科学省にご相談をしながら、県、市、JASSOのご協力を得て、宿舎の無料での確保まで準備をいたしました。残念ながら、短期滞在をのぞき、実際に疎開してこられた学生はいませんでした。しかし、本コンソーシアムの5周年記念事業としては、今回の式典とシンポジウムに加え、加盟校による震災と復興をテーマにした連続講演会、そして県のご協力を頂き、加盟校の学生と教職員をボランティアとして派遣することでした。当初、宮城県での活動予定であったものが、天候のために岩手県の陸前高田での活動に変更になったりしたこともありましたが、参加した学生たちは、被災地における人と人の繋がりや絆の重要さを実感し、他の大学の学生と共に経験をすることからの学びの大きさを感想として寄せてくれました。単独大学だけでなく他大学の学生と経験を共にすることから、多様性や絆を学ぶことができたということです。

兵庫県はいうまでもなく大震災を最初に経験した地域であり、我々は人と人との絆の大切さも相互扶助についてもよく知っています。学生たちに、自己責任を身につけてもらいつつ、人と人との絆や相互扶助を実感してもらい、多様性を尊重してもらう機会を、学習面でもボランティアや課外活動面でも作り上げ、ひょうご神戸の地域住民、産業、自治体の皆さんと共存共栄していくためにも、コンソーシアム事業を今日ご臨席頂いた皆さまのお力添えによって実現していきたいと存じます。

国の財政状況が厳しい折、文部科学省のご尽力にもかかわらず、昨年度で終わった戦略的大学連携支援事業に続き、私学助成の特別補助金からもコンソーシアム形成支援がなくなり、本コンソも財政面、事業面での見直しと強化を行わざるを得なくなっています。これから10周年、20周年と本コンソーシアムが発展していくためには、公益法人化の道も検討していかなければならないというのが、理事会での課題となっております。

阪神淡路大震災から始まったどうか、ひょうご神戸における大学間連携が、東日本大震災の発生したこの年に5年目という最初の節目を迎えましたのも不思議なご縁を感じます。人と人の、協定校同士の絆を深めつつ、本コンソーシアムが地域社会に根ざした発展を目ざしていきますには、本日ご臨席頂きました皆さまの一層のご支援ご鞭撻が不可欠でございます。皆さまへの感謝とお願い捧げまして、式辞の結びとさせて頂きます。

本日は誠にありがとうございました。

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