活動報告

発足記念シンポジウム(2006(平成18)年10月20日(金))

■レジュメ

大学コンソシアムひょうご神戸 「変貌する社会・変革する大学」要旨

天野 郁夫(東京大学名誉教授)

「社会は大学に期待するか」という、このシンポジウムの問いは、社会に対しても向けられねばならない――「大学は社会に何を期待するのか」。

10年近く前になるが、「大学と地域交流」という研究プロジェクトを発足させ、7校の国立大学の教員と大学の立地する県の有識者、それぞれ7000人を対象にアンケート調査を実施したことがある。その調査結果から明らかになったのは、交流の現実に対する双方の無知・無関心であった。大学と地域社会の間には、すでにさまざまな交流の実態があるのにも係らず、大学を地域社会の側もその現実にほとんど自覚的ではない。それは交流が大学という組織体ではなく、教員個々人のレベルで行われ、有識者の側も個人的な経験を通して大学をみているためであった。無知・無自覚は、時には過剰な、時には過小な期待や願望を生む温床となる。国立大学に向けられた社会の目の厳しさを、痛感させられた調査結果であった。

国立大学の法人化によって、そうした事態はかなりの程度、改善されたが、期待のすれ違い、ギャップは依然として大きく残っている。それは、「社会が大学に対して何を期待しているのか」を、大学の側が適確に読み取る能力が十分でないのと同時に、社会の側にも、「大学には何ができ、何ができないか」に対する理解力が欠けているためである。それは国立大学に限らず、ますます社会、地域社会や企業との交流・連携に、存続と発展の基盤を持たざるを得なくなっているすべての大学にとって、不幸な事態というほかはない。

ここでは、大学関係者の一人として、「変貌する社会」が大学に何を期待しているのかを読み取る努力をしたうえで、「改革する大学」はいま何ができるのか、何をしなければならないのかを考えてみたい。大学が社会に何を期待するのかも、それをとおして見えてくるはずである。

  1. 大学と社会の交流
  2. 自覚と認識の不足
  3. 法人化のもたらした変化
  4. 知の共同体から経営体へ
  5. 変貌する社会の人生設計
  6. 高等教育の「高等普通教育」化
  7. 教育・職業関係の宿命
  8. 大学は何を教えているか
  9. 「役に立つ」職業教育は可能か

<< 戻る

このページの上へ↑