活動報告

発足記念シンポジウム(2006(平成18)年10月20日(金))

■レジュメ

テーマ「変貌する社会から大学に求めるもの」

関西経済同友会・教育改革行動委員長
サラヤ株式会社 社長 更家 悠介

今、時代は大きく動いています。インターネットを中心とした情報社会が、驚くべき スピードで世の中を変えています。アルビントフラーは、農業革命の第一の波、産業革命の第二の波、に続く第三の波として、この情報社会をとらえ、人類が大きく転換していく時代の変わり目と位置づけ、社会の変革に警鐘をならしました。堺屋太一は、20年前に「知価社会」の到来を告げましたが、予想を超えた技術と情報の発達により、トフラーや堺屋太一が予想もしなかったレベルまで、地球全体をまきこんで社会が変容してきています。

さらに1989年のベルリンの壁崩壊以来、共産圏にいた国々が世界市場の体制に入り、情報技術の発達とあいまって、大競争時代に突入しており、企業も仕事の質の変容が求められています。また、別の意味では、優秀な人材が、低コストで仕事をしてくれる時代にもなりました。

また近年、中国やインドの経済発展とあいまって、石油や鉄などの資源の需要が高まり、 原材料の高騰をもたらせています。それと相まって、更に加速する地球温暖化問題は、戦争とは違った、人類全体が遭遇する地球規模の問題として、今まさに解決が求められています。また日本においては少子高齢化の進行により、社会システムの大転換が余儀なくされています。そのため、医療・福祉・年金の見直し、国家財政の建て直し、道州制の導入など、大きな課題の解決にリーダーシップが求められています。このように大きな変化の時代、またかつての経験が適用できない世界において、教育も含めて、大変革が求められていますが、改革が変化に追いついていないのが実情です。いくつか企業の中から実例をあげてみれば、以下の変化と問題点が浮かび上がります。

(1) 仕事の質が変わってきている

インターネットでかなりの情報が取れる社会では、これらの情報をネットワークして、更に、付加価値の高い仕事に仕上げていく、仕事のスタイルが求められている。またグループウェアの活用により、場所と時間が離れた人々が一緒に仕事をして、成果をあげていくことが、求められている。また世界の各地域が、コストの安い通信で結ばれるているので、現状でもみられるインドや中国への一部の仕事のアウトソーシングは、ますます増えることが予想され、競争優位を保つポジショニングが必要である。

(2) 創造性の発揮が求められている

グローバルな競争では、コモディティは、コストの安い最適な場所で生産され、流通される。ゆえ、日本だけがその生産地とは限らない。これからの日本企業の勝負どころは、創造性であり、ハイタッチ(感性が高いこと)である。日本人の創造性について、疑問を挟むヒトもいるが、J-popの流行や、家電や自動車への技術など、捨てたものでもない。企業と大学のありかたも、この基軸を中心に変わってこざるをえない。

またインターネットの普及により、知識の習得やマニュアル化された仕事内容の習得は、以前に比べ格段に容易になっているが、それをいかに知恵として用いるか、例えば医学では、患者からのニーズヒアリングや接触の方法など、より人間的な要素が求められるようになっている。

(3) 多様性への対応が必要である

世界からいろいろ情報が入り、また豊かな社会の中では、消費者のニーズが多様化する。多様なニーズを充足するためには、企業人としては、柔軟な理解力が必要であるが、更に種々の情報に流されない確固とした人格や人間性の基本が必要である。またそのための人間的な基本や背景になる自国文化への理解、更にその上で好奇心の発揮や、異なる文化の理解が必要と思う。

(4) 教育改革について

企業サイドから企業人に求めることとして、スキルマップ、マインドマップ等で目標を具体的に示すことはある(別紙)。しかしヒトは全人格的であり、具体的な個々の目標をあげても、その人間を判断しにくいことも事実である。ヒトは自立心をもって働き、まず自分の生活を確立し、そして仕事を通じて、社会に貢献できるようになれば一人前であり、そのような目的のもとに、初等教育から高等教育、そして仕事の場を提供する企業がシームレスにつながれば、いうことはない。また研究機関としての大学と企業の関係は、その基本ができた土台の上に構築されるべきである。

(5)現在の教育

現在の教育は、初等教育においては、道徳心の涵養や、挨拶、思いやり、弱いものいじめをしない、国や地域を愛する心をもつなどの、人間としての基本の教育が弱いことが指摘されている。また大学など、高等教育においては、一部の大学では講義中に携帯電話をする、私語は多いなど、ことに文科系教室の多くは、総合レジャーランド化しているとの指摘もある。

(6)なすべきことは何か

「企業が求める人材」を論じる場合、従来ややもすると企業の論理と誤解されることが多かった。しかし、企業と個人を対立軸でとらえるのは古い。企業がこれから求める人材とは、自律型人材であり、そのような自律性の中から創造性やリーダーシップが発揮されることを望む。それはとりもなおさず、社員が自分で夢を設定し、実現に向けて努力できる人材となることではないだろうか。企業における人事もそのような意味からは、企業の「囲い込み」や個人の「ぶらさがり」から、能動的、自発的な社員像の中で、社員と企業が自立し、お互いがある種の緊張感をもった人事関係に転換せざるをえない。

自己実現するためには多くの場合、リーダーシップが求められよう。真のリーダーシップを発揮するためには、倫理観や使命感、誠実さ、包容力、洞察力、先見力、指導力、明るさ、品格、教養など総合的な人間力が問われる。したがって、これからの大学は、まず人間の基本として、リーダーシップの本質を考える機会や、創造性発揮の土台となる人間理解を深める機会、例えば、歴史、哲学、宗教学(世界の主要な宗教の教義概略を学ぶ意味で)、芸術、政治学などを学生が学び、実践し、習得する機会の提供が必要ではないだろうか。

また大学の入口としては、記憶偏重の入学試験から脱却して、個人の学習に対する姿勢や基本をもっと評価し、そのような人材を獲得するべきであると思う。

知的好奇心がある限り、ヒトは学習し続けることが出来る。知的好奇心を刺激しうる立場にある、社会への出口としての大学に寄せられる期待はとても大きい。

以上

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